先週、歯医者の治療をした。
家から目と鼻の先にある歯医者さんで、
治療してくれた先生はけっこうなおじいさんである。
かくしゃくとしたじいさんで、
仕事ぶりも長年の経験に裏打ちされているからなのか、
自信が感じられて頼もしい。
「この歯の隙間にゴミがたまりやすいから、
こうやって歯をみがきなさい。
こ、うやって、ローリンッ、ローリングして、
掻き出すんだ」
歯ブラシをガッっとオレの口につっこんで、
ローリンッの実演をしてくれた。
ぐわしっ、ぐわしっと、力強い。
頼もしいじいさんだと思った。
ふと、昔のことを思い出す。
* * *
八紫生のじいさん
2005-01-22 (Sat)
仕事で行ったとある病院の目と鼻の先にある定食屋で昼飯をくった。
おそろしく古い店でお世辞にも綺麗とは言えない。
その古さはオレが生まれる前の昭和50年とか
それぐらいのかおりを漂わせている。
店を切り盛りしているのは総白髪のじいさん一人きりである。
以前何度か来たことがあるが今日はいつになく混んでいた。
じいさんは一人でハンバーグ焼いたり飯盛ったりキャベツ切ったり
大忙しである。
幾分待たされて注文の品を持ってきたとき
御老体にむち打って
息でもきらしているかしらと思ったら
全然そんなことはない。
じいさんは
「おりゃもう70だよ。
正月っから休みなしで働きっぱなしだよ。
わっはっはっ」
と大威張りである。
店はきたね-し、料理の盛り付けはおおざっぱだが
「ああ忙しい忙しい。
いきなり混んできておりゃびっくりしちまったよ。
ありがてえありがてえ。
(普段はどうなんですかと聞くと)
いつもはおめえ、閑古鳥がないてるよ」
と独り言なんだかこっちに話し掛けてんだか
わかんない風にしゃべりながら
ががががーっと仕事をこなすのを見ていると
そんなことは些細なことに思えてくる。
オレは一発でこのじいさんがすきになってしまった。
こんな矍鑠(かくしゃく)としたじいさんははじめてだ。
・・・(中略)
その店は跡継ぎがいないから、
じいさんが死んだら終わりだそうだ。
だからじいさんは死ぬまであの店をやっていくつもりらしい。
と、親父に聞いた。
すごくいいと思う。
かっこいいぜ、じいさん。
じいさんがポックリいく前に、またあのお店にいこう。
* * *
八紫生のじいさんは元気だろうか。
行き先はしらない。
でも、ああいうかくしゃくとしたじいさんになるのはいいな。