少し前にハネムーンサラダを作ってみた。
むかし、高校生のころ読んだ漫画で、
二宮ひかるの「ハネムーンサラダ」というのがあって、
あれは強烈な漫画だったからずっと覚えている。
その中に件(くだん)の”ハネムーンサラダ”が出てくる。
ハネムーンサラダというのはレタスだけのサラダのこと、らしい。
lettus only (レタスだけ)
これは音だけだと次と(ほぼ)同じ
let us only (私たちだけにして=二人きりにして)
だから新婚の二人が食べるのだ、というようなエピソードが
作中で出てくる。
これがずーっと頭の中にあって、
結婚したらこれを食べてみようと思っていた。
けど忘れてた。
で、結婚3ヶ月が過ぎた頃、ふと思い出して作ってみた。
作るといってもレタスちぎって終了なのだけど。
でもこれだとたぶんおいしくないので、
イタリアンドレッシングをかけて食べた。
奥さんと「草食動物みたいだね」といいながら食べた。
まぁだから何だって感じですが。
* * *
ただこの話、高校生の頃は素直に信じていたけど、
今になって聞くと、どことなくうさんくさい。
作者の創作かな?とhoneymoon saladでググってくると、
極僅かだけど英語でそれらしいことを書いてある記事があるので、
たぶん本当なんだと思う。
(でも検索結果の上位をこの漫画がほとんど占めている)
ハネムーンサラダは他にも
Lettus alone without dressing (ドレッシングなしでレタスのみ)
=Let us alone without dressing (私たちを裸で二人だけにして)
という言い回しもあるらしい。
というか、こっちが正統っぽい。
露骨だー。
こっちが正しいとすると、ドレッシングをかけたのは邪道だったかも。
* * *
それはともかく、「Honeymoon、蜜月」という言葉の持つ質感がすきだ。
蜜、なのである。
甘いのである。
砂糖じゃなくて蜜だから、あまあまだ。
付き合いたてのカップルなんか、まさにこういう状態だ。
今までずっと蜜月の"蜜"の方に注意が向いていたけど、
実は"月"の字の方にも思っていたより深い意味があると知った。
HotForWordsが上記リンクで
Honeymoonの語源について解説しているのを見て知った。
英語のHoneymoonというのは他の言語から借用してきた言葉のようだ。
すなわち、蜜月という言葉がHoneymoonの直訳であるように、
Honeymoonというのはフランス語の lune de miel の直訳なのだ。
(そういう単語をcalqueと呼ぶ)
それで、lune de mielも結局 "月 (lune)" と "はちみつ(miel)" なわけだけど、
"月"という表現には「ひと月で満ちて欠けてしまう」、
という含意があるということ。
つまり一定の期間しか続かない、ということ。
この"月"という文字に込められた意味を知ったとき、
頭の中に感嘆符が5個ぐらい並んで、大発見をした気がした。
どんなにお互いが好き合って熱愛中でも、
じきに冷めてしまうということが古今東西問わず、
普遍的にそうなっていたというのが、
おかしいようなせつないような気がした。
* * *
ちなみに、ハネムーンの語源はこの他に、
古代ゲルマン人の風習で子作りのために
一ヶ月間ミード(はちみつを発酵させたビールのようなお酒)を飲んで
精力をつけたために由来するという説があるらしい。
* * *
そういえば、日本語で「ハネムーン」というと、
"新婚旅行"という意味で使われるのが普通か。
こういう、言葉が本来持っていた豊かな意味が失われて、
別な、しかも大して深みのない意味に言葉が置き換わってしまうのは
個人的には悲しいなと思う。