フェムトセカンド #七味とーがラジオ / @melonsode

The Destination is unknown. The Journey is the Reward.
Author: 野澤真一 / NOZAWA Shinichi , version 2.0220330 / Podcast: 七味とーがラジオ / twitter: @melonsode

幸せな(いまにしてみれば「おめでたい」)国家だった

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日本はこれまで、幸せだったんだと思う。
母国語以外ができなくても問題はなく、
政治に関心がなくても不利益を被ることはない。

言語に関しては、これから先、
「英語ができると有利」というオプショナルな価値ではなく、
「英語ができないと先はない」という必須の力になる。

政治にかんしては、上の人たちが「よきに計らってくれる」という
おもねりが、もはやできなくなった。

すべての人が政治に参加するのは当然だ、と
多くの人が思うだろう。
古代ギリシャのように、
全員が政治に参加する直接民主主義が理想だと言うだろう。

自分でもそう思うし、政治というのはどこか他の世界のことではなくて、
まさに”自分の問題”だと思う。

けれども、「自分の問題」であっても、それは「自分が解きたい問題」で
あることは往々にしてない。
ほとんどの問題が向き合いたくはないけれど、
そうせざるを得ないめんどくさい問題だと思う。

だからこそ、そういうめんどくさいことに関わらずに無関心でいられた時代は
幸福な時代だったのだと思う。
”上”の人たちがよく考えてやってくれてるんでしょ。
そうやって人任せにしていられたこの国は幸せだったのだ。
戦後から90年代まではそれでこの国はうまくまわっていたんだから。

投票率が70%を大きく下回っていてコマッタモノダとか言うけれど、
それはそれだけ幸せな国家だったということなのだ。

言語に関してもそうだ。
外国と真剣にコミュニケーションをとる必要性がなかったから、
韓国や中国に大幅にその能力の差がつけられてしまっている。

それは英語に限ったことではなく、
国語以外の言語に対する関心が、おそらく低すぎる。
日本が島国でなく、どこか他の国と隣接していたら、
きっと他国の言語を習得することに対する切実さは
もっと全然別のことになっていただろう。

自分の国の言葉さえ話せればとりあえず問題ないという
アメリカ人みたいな態度でいられたことも
やはり幸せなことだったのだ。

少し前のブログで書いた記事「人は変わるんだということ」は
自分なりのLanguage policyの挫折を書いたつもりだ。

それまでの自分は、学問は全て自国の言葉で学習することができる、と
何の疑いもせず信じていた。
そして、学問のような理解するのに高度な思考を要するものは
母国語以外の言語では到底習得することはできないと思っていた。
そうして、どこの国だって、学問は自国の言葉で行うし、
それができない国は文明が遅れている国であって、
日本は十分文明が進んでいるから、
他国の言語で学問をやる必要はないと信じて疑わなかった。

いまから思えばなんて稚拙で傲慢で無知なのかと思わずにはいられないけれど、
でもそれが間違っているなんて露も思っていなかった。

だから、英語の教科書を提示されて、
これ以上学ぶためにはそういうものを読むしかないという現実を突きつけられたとき、
20年弱で築かれた自分の世界観は激震した。
それからその現実を受け入れるまでの数年間は、
苦々しい挫折の期間だった。

日本語だけでいいじゃん、と言っていられた期間も
やはり幸せだったのだと思う。

もう日本は、否応なしにグローバル化の流れに飲み込まれている。
まだ断片的に旧来の秩序は残っているが、
その流れのうねりによってその残った秩序はずたずたにされて
レゴブロックの1つのブロックぐらいまでに分解されてしまうだろう。

もしかしたら、そうならずに済んでいたのかもしれない。
日本がきちんと一定数のエリートを育てて、
その人たちに国をコントロールさせ、対外的な折衝をやらせれば、
市井の人々はもっと気楽でいられたかもしれない。

でも、日本はエリートの育成に失敗した。
グローバル化のうねりと国内の凪を切り離しておけるだけの
バッファーたるエリートはこの国にはいなくなってしまった。

エリートは、国家を外国の暴風から身を挺して守るという大変な役目を
負わされる反面、それ相応の見返りを与えられ、
何より国民から尊敬される。
でもこの国にはもうそういう人材はいない。

50年前といまとで「総理大臣」のステータスは失墜してしまった。
それまでは日本一偉い人だった。
いまは、間抜けの同義語といっても賛成してくれる人は多いはずである。
政治家もいつのまにか無能な悪代官になってしまった。

だからもう、腹をくくって全員が裸踊りをはじめるしかないのだ。


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