早稲田大学 理論生物学シンポジウム
池上高志、塩谷賢、郡司ペギオ幸夫、相澤洋二氏
他による議論あり。
茂木健一郎 『意識をめぐる問題の現状と課題』
早稲田大学理工学部新大久保キャンパス
MP3, 65.9MB, 71分
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クオリア日記より抜粋
早稲田の理論生物学シンポジウムは、
朝一で私が喋る番だった。
ボクは、honestでありたいと思った。
心脳問題は、剃刀でこまごまとした細工を
するというよりは、
ナタで大まかなかたちをつくるという
段階にある。
表面的には精緻でもっともらしく見える
モデルの多くは、実は重大なるごまかしを
している。
どこをどうごまかしているのか、
現状における問題点は何か、そのあたりを
概観した。
塩谷賢、郡司ペギオ幸夫、池上
高志や、相澤洋二先生と忌憚ない意見の
交換ができた。
意識問題について今必要なことは、コンセプト
ワークである。
量子力学においては、波動関数の
数理の詳細を知らない段階でも、
コンセプトレベルでその本質をつかむ
ことはできる。
たとえば、粒子と波動の二重性。
「ダブルスリット」の実験に
おいて、電子を現す波動関数が
両方のスリットを通り、それがスクリーン上で
干渉して、複素振幅のノルムが
粒子としての電子がそこで発見される
確率になる。
そのような形で、詳細を計算しなくても、
理論的枠組みを理解することができる。
意識の問題については、そのような
形での「理論の概略」がない。
たとえ、あるモデルで記述される
対象があったとしても、その対象が
一切の意識的表象が随伴しない「哲学的ゾンビ」
であるという可能性はどうして排除
されるのか?
この、「哲学的ゾンビ問題」について、
答えられるモデルは現時点ではない。
全速力で間違った方向に走っているよりも、
たとえ少しずつでも、正しい方向に
歩んだ方が良いと思う今日この頃。
ベームの指揮するウィーンフィルの
ブラームス第一番を聴いていて、心が
高揚した。
誰もが言うことだが宇宙的な広がりの
ある音楽。
自分がもし今月面に立っていたら
我が身を焦がす
地球上の細々とした悩みは、一体どのように
見えることだろう。