[英語]芸術の自由 (with Christo and Jeanne-Claude)

2007年11月07日 | クオリア日記の該当記事 | このファイルに関連するクオリア日記の記事

クリスト、ジャンヌ=クロード、茂木健一郎、加藤啓進

水戸商工会議所会頭 加藤啓進さんによる挨拶 10分
茂木健一郎 芸術の自由 15分
クリスト、ジャンヌ=クロード トーク 60分
会場との質疑応答
対論 20分

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水戸市常陽藝文ホール
Download MP3, 59.6MB, 130分

最初に私が20分喋ることになっている。
急遽スライドを、と思ったが、
プロジェクターがない。

私がどんなことを喋っているのか、
クリストとジャンヌ=クロードに
伝わらないのではツマラナイ。

かといって、全部英語でやったら、
聴衆には何のことかわからない。

観念し、覚悟を決めた。

「ジャンヌ=クロードと
クリストという二人の素晴らしいゲストに
感謝と敬意を表するために、
私は生まれて初めてのことをやろうと
思います」
と切り出した。

「予定していたことの、二分の一しか
喋れないでしょうが、二倍面白くなると
期待しています。そして、私自身
にとっては、3倍難しいことになるでしょう」

日本語でまず喋ってから、英語で
喋る。
「一人逐語通訳」である。

「アートは何よりもプライベートな経験である。
それは、ジャンヌ=クロードとクリストの
素晴らしい作品群が示しているように、
言葉で表現できるものではない。
その一方で、アートは、コミュニケーションや
コミュニティ・ビルディングに関わること
でもある。
ジャンヌ=クロードとクリストが、
作品の実現のために時に20年や30年もの
長い年月粘り強く交渉するそのプロセスに、
そのようなアートの両義性は表れている。
日本では、確かに、東京と地方の間に
格差がある。
しかし、すぐにわかってしまうような
目的、言葉にできるような機能性、
そんなことからアートを通した
「町おこし」のようなことを志向しても、
かえって夢を実現することはできないだろう。
アートの力というものは、もっと根源的な
ものである。
私たちが生まれ落ち、言葉を学ぶ前から
抱いていた生命の衝動。そのようなことに
つながるものである。
アートとコミュニティの関係を
考える上で、ジャンヌ=クロードと
クリストの仕事は、大切な一つの
インスピレーションを与えてくれる」

概ね、そんなことを話した。

ジャンヌ=クロードが、
「プロフェッサー モギの言ったことに
400%賛成します」
と切り出した。
「そして、それはまれなことなのです」

二人のトークは、スライドを使いながら
現在計画中のOver the River、
The Mastabaの二つのプロジェクト
について説明する、
完璧に準備されたものだった。

私と、クリスト、それにジャンヌ=クロードの
対論。

何か深いものに触れた気がした。
感動した。

ジャンヌ=クロードと
クリストにとっては、あのような
巨大なプロジェクトを進める
ことは「自由」の追及なのだという。

「私たちのプロジェクトは、決して
巨大ではありません。
それを言うならば、人類はもっと
大きなものを作っています。
摩天楼、高速道路、大規模な耕作。
私たちの行為は、そのような、誰かに
よって既に設計された空間の
中に住むことに慣れてしまった
人間が、本来持っているはずの自由を
取り戻すための儀式なのです。」

「大切なのは、実際の帝国議会議事堂
に触れ、それを変えるということであって、
そのスケッチでは
ないということです。現実そのものに
働きかけ、変容させる。そのことが
大事なのです。」

私たちは、落書きをしたり、
キャンバスの上に絵の具を置いたりとか、
そのような「自由」で満足して、
自分が包まれている巨大な不自由に
は気付かない。

「そうです。自由というのは、
真剣に追及しようとすれば、
とても手間と手続きがかかる
ことなのです。」

最後に、「1000年後にどのような
形で覚えていてもらいたいですか?」
と聞いた。

「名前は消えてもいいのです。
ただ、昔むかし、あるところで、谷
にカーテンが敷かれた。島が包まれた。
無数の傘が置かれた。そんなことが
あった、という形で覚えていてほしい」

ジャンヌ=クロード、クリストと
かたく握手をして別れる。

森司さんが「いやあ、今日は良かった。
勇気をもらったよ。この仕事をしていて
良かった、と思えた」
と力強く言った。

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